トールマン
コメディ度:1/10
グロ度:1/10
感動:3/10
リアリティ:4/10
人に勧めやすいか:6/10
満足度:6/10
目次
2012年製作/アメリカ、カナダ、フランス合作/上映時間106分 監督・脚本:パスカル・ロジェ 撮影:カマル・ダーカウイ 音楽:トッド・ブライアントン 編集:セバスティアン・プランジェール 出演:ジェシカ・ビール、ジョデル・フェルランド、ウィリアム・B・デイビス、サマンサ・フェリス、コリーン・ホイーラー、ガーウィン・サンフォード、ジャネット・ライト、イブ・ハーロウ、ジョン・マン、ティーチ・グラント、フェーン・ダウニー 6年前に鉱山が閉鎖され、急速に寂れた町コールド・ロック。そこでは次々と幼い子どもたちが行方不明になっており、人々はトールマンの仕業だと恐れていた。 以下ネタバレあり アメリカでは毎年80万人の子供が失踪するが、その多くは数日中に発見される。しかし1000人ほどの子供は、跡形もなく消え去るのだ。 コールド・ロックの坑道から、捜査官のドッドは保安官と共に出てくる。何も見つからず、この坑道を封鎖するように指示した。 治療中のジュリアの元に赴き、ドッドは子供が見当たらないことを告げる。 コールド・ロックという町は6年前に鉱山が閉鎖されたことにより、仕事がなくなって徐々に荒んでいった。 トレイシーは娘のキャロルが腹痛を訴えたことから、町の診療所に駆け込んだ。看護師のジュリアが飛び出してきてキャロルの容態を見ると妊娠している事が発覚。トレイシーは娘の妊娠を知らなかった。 設備が無いもののジュリアの助けのおかげでキャロルは子供を出産。 この町では恐ろしい事件が起こっていた。突然、幼い子供が何人も失踪している。犯人は分かっておらず、人々は”トールマン”と呼ばれる怪物のせいだと噂した。 トリッシュのカフェには日夜張り込みをしているドッドが、何度もブラックコーヒーを飲みに来ていた。ジュリアがコーヒーを飲みに店に入ると窓にはジョンソン夫人が立っている。彼女も子供を失った親の一人で、精神を病んでしまっていた。ジュリアは彼女にコーヒーを渡してあげる。 トレイシーにはもう1人、ジェニーという名の娘がいた。彼女は言葉を喋ることが出来ず、筆談でコミュニケーションをとる。ジェニーはトールマンを見たとジュリアに知らせた。 ジュリアの家にはデビッドという男の子がいた。ジュリアの外出中はクリスティーンが面倒を見る。ジュリアの夫は生前、医師として町の人々から尊敬されていた。彼のことを思い出してしまったジュリアはクリスティーンから勧められるままに強い酒を飲んで眠りにつく。 ジュリアはガラスが割れる音で目を覚ました。階段を降りていくと、クリスティーンが拘束されて血を流している。黒い服を着た人影がデビッドを連れ去っており、その姿を見たジュリアは必死に後を追いかけた。犯人の運転するトラックの後ろに飛び乗るが、段差の振動によってジュリアは落下。様子を見に来た犯人に気づいたジュリアは車の下に隠れる。 助手席にいるデビッドを連れて逃げようとするが、同乗していた大型犬が襲いかかる。彼女は近くにあった石で殴り、犬を倒したが犯人に捕まってしまった。彼女は手を拘束され、荷台に載せられる。 しかしジュリアは拘束を自力で解くと、運転している犯人の首を絞めた。車は横転し、犯人はデビッドを連れて歩いていった。 気絶から目覚めたジュリアは足跡を辿って森の中に入るが、道路で倒れ込んでしまう。 パトロールしていたドッドが見かけて、ジュリアをカフェに運び込んだ。店主のトリッシュはジュリアに着替えとタオルを用意。ジュリアは顔を洗って着替えを済ますが、外で保安官やダグラスが何か話しているのを目にする。店の奥に失踪した子供の写真を見つけた。そこにはデビッドの写真もあり、ジュリアは逃げ出した。 保安官の乗ったパトカーはボロボロな建物に到着。ジュリアはパトカーの後部座席に隠れていた。彼女は保安官のいないうちに外へ降り、建物の内部に侵入。中にはデビッドがいた。彼を追いかけているとジュリアは黒い服の男に殴られ、拘束されてしまう。 黒い服の男の正体はジョンソン夫人だった。実はデビッドは彼女の息子なのだが、ジュリアは彼を洗脳して自分が母だと思わせていた。現在デビッドの洗脳は解けており、ジュリアを恐れている。 そう語るジョンソン夫人は先日、ジュリアの家に息子がいることを目撃。誰も相手にしてくれなかったが、トリッシュだけは信じてくれた。トリッシュは店にいた町の人々にジュリアが怪しいと拡散してくれたそう。ジョンソン夫人は他の子供達はどこだとジュリアに問いかける。 こっそりと拘束を解いたジュリアはジョンソン夫人を殴り、逃げるデビッドを追いかけた。そこにジェニーが現れ、デビッドを捕まえると3人は車に乗り込む。 自宅に戻ってきたジュリアはデビッドを地下室に連れて行く。ジェニーはずっとジュリアのことを監視して、彼女の行いを知っており、トールマンに会わせて欲しいと懇願。 ジュリアは仕方なくトールマンにジェニーの住所と名前を教えた。そして人々や警察が来ることから、ジェニーに帰るように言い渡す。ジュリアは逃げずにここに残ることにした。 集まってきた町の人々から怒りの言葉が投げかけられる。ドッドや警官らに連れられ、ジュリアはパトカーに乗せらた。クリスティーンは首を吊って死んでいた。発進したパトカーに大きな石が投げつけられ、ジュリアに直撃。 ドッドと保安官は地下室に向かった。地下室は坑道につながっており、捜索するにも広すぎる。 冒頭に戻り、ドッドは坑道の封鎖を指示。石がぶつかって出来た傷を治療中のジュリアに他の子供たちはどこに行ったのと問いかける。しかし彼女は口を割らない。 ドッドはジュリアから情報を聞き出すため、ジョンソン夫人に頼った。ジュリアは悪循環を断ち切るためだという。「現在の体制は終わっており、政治家に呼びかけても世界は変わらない」と濁したような答えを返す。 子供たちはどこなのかとジョンソン夫人に聞かれたジュリアは、森の中、坑道の中、どこにでもと答えた。 ジェニーの家ではスティーブンがキャロルを連れ戻せと暴れていた。トレイシーと激しい喧嘩をしており、止めに入ったジェニーも突き飛ばされる。彼女は嫌になり外に出た。すると黒い服の男が現れて彼女を誘拐。後部座席の下に隠れるように指示され、おとなしく従った。 数カ月後、トレイシーの家にドッドがやってくる。ドッドはジェニーが失踪ではなく家出だろうと言い、必ず見つけると約束した。家にはスティーブンとキャロル、2人の子供がいる。 誘拐されたジェニーはベラと名前を変えて、裕福な女性に引き取られた。ジェニーの引き渡しをした、いわゆるトールマンは死んだはずのジュリアの夫であった。彼は世界各地で貧困層の子供達を誘拐し、洗脳しては立派な人間に育つように裕福な親を与えていた。 ジェニーは言語障害も治り、何不自由なく生活させて貰っている。彼女はジュリアの活動を見抜いて、自らこの道を選んだ。他の子供とは違い、ジュリアには本当の母親の記憶が残っている。 ベラが町を歩いていると、公園で同じく新たな人生を歩み始めたデヴィッドを見かけた。 過去の暮らしや母親を捨てたベラはこの行いが正しかったのかと日々、自身に問いかけていた。 ”マーターズ”でカルト的な人気を博す、パスカル・ロジェ監督・脚本作品。マーターズに見られたような前後半の豹変ぶりは本作でも健在。ただ前作が並のホラーからえげつないトーチャーポルノに切り替わったのに対し、本作はホラーから社会問題を取り扱うメッセージ性の強い作品に豹変。 前知識無く過激な映像を求めて鑑賞した人にとって物足りないのではないだろうか。だが訴えかけてくるメッセージの衝撃は前作と同等かそれ以上で、鑑賞後にもじんわりと尾を引く。 図らずも僕は先日”ヘンリー”を鑑賞して記事を書いていたが、主人公のヘンリーは劣悪な家庭環境が生み出した化け物だ。他にも様々な作品において家庭環境が劣悪でまともに育てなかった人を取り上げる作品は多い。 逆にそういった状況下で、何とかまともな人間に育てようとする親を描いた作品も多く存在する。本作はこのよく使われがちな問題を新しい角度から取り上げた点が斬新で、さらに説教くさくないのがいい。 期待していたグロテスクさは無かったが、登場人物が持つ倫理観の危うさは期待通りで、僕は観て良かったと思っている。 作品情報
原題:The Tall Man
配給:キングレコードあらすじ
ストーリー
トレイシーはスティーブンに孕まされたと考え、キャロルと赤ん坊をシアトルの姉の家に預けることにした。
なかなか戻ってこないのでダグラスが向かうと、裏口の扉が開いている。逃げたと判断した町の人々は武装してジュリアを探しに向かった。感想