映画に逃げた

観た映画について書きますがホラー比重重め

強迫性障害患者の異常な日常 映画『八つ』ネタバレあらすじと感想

八つ

コメディ度:1/10

グロ度:2/10

感動:1/10

リアリティ:10/10

人に勧めやすいか:4/10

満足度:6/10

目次

作品情報

www.youtube.com

2016年製作/オーストラリア/81分

原題:Eight

監督・脚本:ピーター・ブラックバーン

撮影:ブラッド・フランシス

音楽:ライアン・ウォルシュ

編集:ジョー・ランカスター、グレアム・ヤング

出演:リビー・マンロー

あらすじ

強迫性障害に苦しむ女性は外出を目指して日々闘病していた。本作はある一日の朝を捉えた作品である。

ストーリー

以下ネタバレあり

 

 

 

目覚まし時計が鳴り響き、ベッドに横たわる女性サラが目を覚ます。目覚まし時計を止めて8回ボタンを押すとようやく起き上がった。腕の皮膚が爛れている。

スリッパを履く際に周りを囲うように素足で叩いた。途中でずれてしまいやり直し、やっと履き終えた彼女はトイレに向かった。

壁には大量のポストイットが規則的に貼られている。用を足してトイレットペーパーを千切ったが8つ折りに失敗してやり直した。

トイレから出たサラは異常なほど手を洗う。石けんを泡立てては水で流しを計8回。手の皮膚が爛れているのはこのせいかと思われる。
スリッパを定位置に置いてシャワーを浴び始めるが、体を洗う力が強すぎて身体は傷だらけ。浴室からはジョリジョリと似つかわしくない音が漏れていた。シャワーを終えたサラは再び周りを叩いてからスリッパを履く。


ベッドシーツを剥がして交換するが黒いシミが付いている。彼女は苛立った表情を浮かべ、新たなシーツと交換。シワを伸ばすために8回撫で付けた。
6:15分に電話が鳴った。主治医とみられる女性からの伝言で「自信を持って」とのこと。サラは電話に出ずにベッドメイクを続けている。


ポールに吊るされた衣服の左から8番目を選択すると歯を磨く。一ヶ所に付き8回擦った。洗面所の汚れに気づいた彼女はゴム手袋をはめると洗剤とブラシ、布巾で清掃を開始。それはシャワールームにも及んだ。

清掃を終えた彼女は再びシャワーを浴び、執拗に体を洗う。そして痛みからうめき声を上げた。洗い終えた彼女は体を拭くが吐き気が込み上げて再びシャワーに戻る。号泣しながら体を洗った。使ったタオルをゴミ袋に捨てていると娘ベルからの着信が入ったが父親ダニエルとみられる男性がそれを切ってしまった。ベルはサラと話したがっていた。


再度電話が鳴り、サラはすぐに受話器を取ったが相手はジャニスという女性だった。6:15に電話をかけた女性と同じだろうか、「どこまでいけた?」と尋ねてくる。


サラは泣きながらベルのベッドに横たわった。壁にはサラとダニエルのツーショット写真が貼られている。しばらくすると立ち上がり、ごみ捨て作業に戻った。タオルのみならず清掃に使用した洗剤、ブラシ、布巾も袋に入れた。ガウンの下に下着を着ると手を洗う。


ゴム手袋をはめてグラスを用意するとペットボトルの水を少量ずつ8回注ぐ。薬を用意して水を8回に分けて飲み干した。


着替えを試みるが先ほど用意した服が気に入らないのか、適当な場所に戻して再び左から8番目の衣服を取り出す。


着替えを終えて湯を沸かしているとドアの外からベルの声が聞こえた。ベルはサラにとても会いたがっているが、サラに扉を開ける勇気が出ない。ダニエルがやって来てベルを車に戻し、サラに「何とか会えないか、彼女には母親が必要なんだ」と頼む。どうやらサラは突然こうなってしまった様で、ある程度理解のあったダニエルもそろそろ限界な模様。サラは玄関で泣き崩れながらそれを聞いていた。


ダニエルが去った後、サラは再びシャワーを浴びそうになるがポストイットに”何度もシャワーを浴びる必要はない”と書き込んで逃れた。


ジャニスからもうすぐ家に着くわと電話が入った。サラが着替えていると来客が訪れる。ジャニスかと思って返事をしたが相手は宅急便だった。業者はサインを求めるがサラは階段に置いといてと頼んだ。サインを貰えないと渡せないとのことで業者は郵便局に戻ってしまった。


サラは朝食を作ろうと卵を割るが、8回叩かないといけないので上手く作れない。
ジャニスが家にやって来た。サラはおそるおそる扉を開けて彼女を招き入れる。
ジャニスはサラが外出できるように手助けしているが、今日はいつもより酷いらしく「明日こそ頑張りましょう」とすぐに帰ってしまった。以前は着替えすらも出来なかったらしく、治療の効果は現れている様だ。


ジャニスが帰った後、サラは手を洗って外に出る。外にはジャニスが待っていて、サラは彼女と握手すると逃げるように家へ戻った。

 

感想

全編長いカットで構成されており、没入感が凄まじい。台詞が少ないものの起きていることが明確でダイレクトに届く。日常の一コマを描いた作品なので山場など存在しないが、役者の迫力ある演技が退屈させない。

僕は本作を下手なホラー映画よりも恐ろしく思った。本作がどれほど実際の病状を参考にしているかは分らないが、レビュー等で共感の投稿が多く寄せられていたことからかなりリアルなのだろう。

確かに強迫性障害を患っているサラの苦悩は読み取れるのだが、それ以上に客観的に見た様子があまりにも恐ろしい。端から見て些細な事に対し、執着してしまうのが主な病状なのだろうがそこに合理性は見当たらず、ただただ異常に映る。

随所に散りばめられた8にまつわる儀式行為に目がいきがちだが、不潔恐怖症の方が深刻に思えた。事ある毎に手を洗い、シャワーを浴びているせいで皮膚が爛れてしまっている。やらなければいけないと思い込んで行為に及んでしまうのだろうが、そこに理性が働いているとは思えない。

薬を飲むときにゴム手袋をはめるのに対して、卵を割るときに手袋をはめないのは何故なのか。

身の回りのことをきっちりとしているようで、服を乱雑に脱ぎ捨てたり、サイズの合っていないゴム手袋をはめたりとどこか気になる箇所がある。自分はそっちの方が嫌だなと思う点が疎かにされているのを見ると、引っかかるというか気持ちが悪い。価値観の違いというか何というか。

いつ自分が患うかも分らない強迫性障害への恐怖はもちろんだが、強迫性障害の患者に対しても恐怖を覚えてしまった。Twitterやアマプラのレビューで共感したと勧める文章が見受けられたが、本作を人に勧めるのはどうかと思う。

八つ

八つ

  • 発売日: 2017/10/09
  • メディア: Prime Video
 
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