映画に逃げた

観た映画について書きますがホラー比重重め

「シリアルキラー展2020」の感想

2020年10月29日から2020年12月06日まで東京・銀座のヴァニラ画廊で開催される「シリアルキラー展」に行ってきた。イベント概要や展示物については公式サイトを見て貰いたい。

www.vanilla-gallery.com

本展示会は近年毎年開催されており、例年多くの人で混雑するらしい。今年は感染症対策としてチケットの事前購入が必須となっていて、入場人数が絞られていたため、快適に観覧することが出来た。1時間という時間制限があるが十分だった。自分は45分で退場している。

来年以降また混雑するかも知れないし、感染症対策が行き渡っているように思えたので、興味を持っているならば今年が狙い目かも知れない。そもそも来年開催されるとも限らないので善は急げだ。

 

早速、感想を述べていく。

展示自体は楽しめなかった。それと言うのも、自身が展示物に対して価値を見いだせなかったせいだ。飾られている品々はシリアルキラーが描いたイラストや手紙、彼らの所有物の数々である。

その品々はあくまでシリアルキラーが書いたり、所持した事に対して価値が付随しているに過ぎないと感じた。そしてその価値が自分にはピンと来なかった。

 

シリアルキラーが描いた絵の何が凄いのだろうか。自分には特別うまく描かれたものとは思えない。芸術的な学のある人には、異常性や狂気が感じられるのだろうか。他の来場者らが、狂気的だの構図がどうこうだの言っている会話を耳にした。あまりにも自信を持って作品を褒めるものだから自分の感性が間違っているように思えてくる。だが、本心を言えばさっぱり良さが分らない。

ただ、ある1人のシリアルキラーが描いたイラストを見て、これは凄いと思えた。ボールペンで描かれた精密な作品で、他の展示物に比べ飛び抜けて上手い。解説文に目をやると、彼の描いた作品はコレクターから人気があり、高値で取引されているとあった。やっぱりコレクターも僕と同じ尺度で作品の完成度を見ているんじゃないか。自分の価値観は間違っていないと少し安堵した。

 

シリアルキラーの書いた手紙の何が凄いのだろうか。いくつかの手紙が展示されていたが、翻訳文が無かったので英語に弱い僕はおおよその内容しか理解できなかった。だが、別に変な内容では無かったと思う。

筆跡を見ても、癖強いなとか達筆だなとしか感じられない。そもそも外国人が日常的に書く文字を普段目にしないので、もしかすると癖が強いと感じた文字も普通の範疇であるのかも知れない。

 

展示会には創作物の他にも、シリアルキラーが所持していたものや殺人現場の建材が展示されていた。これらの多くに関しては本当に価値が分らない。直接殺人に使用された凶器だったり、エドワード・ゲインが人皮を使って作りあげた家具ならまだ分る。殺人現場の壁の一部や庭の砂、所持していた農具に何の価値があるのだろうか。

逆にコレクターにとって何に価値があり、何に価値がないという線引きに対して興味が湧いた。例えばシリアルキラーの家に転がる空き缶に価値はあるのか?歯ブラシに価値は?食器一枚一枚はどうか?もしこれらにも価値があって高値で取引されるなら、シリアルキラーの家は宝の山だ。そんな事を考えながら眺めていた。

そんな展示物の中でヘンリー・リー・ルーカスの作った時計に強く惹かれた。彼の犯行を映画化した「ヘンリー 」を鑑賞済みかつ、多少彼について調べたことがあったからだ。時計はアイスキャンディーの棒で装飾されているのだが、寄せ木細工の様に精巧で、神経質だったというヘンリーの性格を表しているように感じ取れた。他の展示物に対してもこうした感受性を持って観覧出来たら、より楽しめたかも知れない。

 

入場時にパンフレットを貰うのだが、新しい発見は無かった。大部分は犯罪経歴について書かれており、Wikipediaの情報と大差ない。展示品についての解説はほとんど無くて期待外れ。展示物のリストもない。写真は一部展示物のみ。

このパンフレットは毎年異なったものが配布されているようで、別の年のものとはピックアップされた展示物が違っていた。僕の気に入った作品が丁度載っていなくて残念。

 

ここまでネガティブな事ばかり書いてきた。そんなに文句ばかり言って、なぜシリアルキラー展に行ったのかと思うかも知れない。

僕は何らかの衝撃を求めてシリアルキラー展に赴いた。それは恐怖かも知れないし、感動かも知れない。とにかく普段目にしないセンシティブなものを目にすることで、心が揺さぶられるのを期待していた。ただそこまで達しなかったというだけである。

 

僕は自分以外の来場者が、何を求めてここへ来たのか気になった。だが小心者の僕に直接聞くことは出来ない。そもそも迷惑だ。なのでチラッと様子を見ていた。

同じ時間帯に来館していたのは、サブカル系の見た目をした女性2人組、サブカル系の見た目をした男性1人、文化人らしき女性2人組、仕事終わりの若いサラリーマン2人組、若いカップル2組、老夫婦1組、若い男性1人だった。

サブカル系の見た目をした人々の来た理由は、まあ、なんとなく分る。分化人らしき女性らは、構図がどうこう話していた。サラリーマンはノリで来たのだろう。スゲーだのヤベーだの騒いでいる。カップルも同じ感じだ。いちゃつきに来ていた。

老夫婦は何も語らず真剣な表情で展示物を見ていた。若い男性も同じく。この3人がなぜ来場したのかは想像もつかない。

 

冒頭にも書いた通り、僕は展示を楽しめなかった。しかし、どんな人物がこの展示会を観覧しているか観察することや、展示される過程について思案するのは大変面白い。シリアルキラー展に行って良かったと思う。非日常を味わいたい人にお勧めだ。

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